ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

ナディアは「シッ」と指を唇にあてた。
そして、長いまつげに縁どられたダークブラウンの瞳を店内の奥へと移す。

え……?

その視線をたどっていくと。

それほど離れていないテーブル席、グリーンに囲まれて
半個室のようになった空間に、一組のカップルが座っていた。
こちらに背を向ける女性の笑い声が流れてくる。

あの、声は……
オレは背筋がしんと冷えるのを感じた。

顔は見えないけれど。
……確かに奈央さんだ。

向かい合っているのは、遠目にも仕立てのいいものだとわかる濃紺のスーツが似合うサラリーマン。
30代前半くらいか。
意志の強そうな太い眉に、きりりと結ばれた大きな口が特徴的だった。

「ね、ちょっとイイ男じゃない? 二の腕見てよ、あれ相当鍛えてるわよぉ。抱かれてみたい♪」

確かに、ラグビーか格闘技でもやってたんじゃないかってくらい、いいガタイしてる。

オレは、ギュッと両手を握りしめ、湧き上がる黒いものを抑え込んだ。
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