ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
広告制作会社に勤務する彼女は、雑誌の記事と連動した企業広告、
俗にいう記事広告っていうやつを作ってる。
大方のマスコミ勤務に漏れず、彼女も
深夜残業でタクシー帰りっていう激務を毎日のようにこなしていた。
奈央さんが仕事にやりがいを感じてることはわかってるつもりだし、
そんな彼女は、とても素敵だと思うけど。
自分のことより仕事、って人だから、心配だな。
——そばにいたなら。
キスして。抱きしめて。
腕の中に閉じ込めて。
無理なんか絶対させないのに……。
ため息を一つついて立ち上がり、混みあってきたスタバから出た。
見上げると、黒い絵の具を中途半端に混ぜたみたいな薄雲から、小雨がパラパラと落ちてる。
傘を出すのも面倒で、オレは構わず雨の中へ飛び出した。
ダウンタウンの目抜き通り、ロブソンストリートのショップは、春節を祝う真っ赤なデコレーションであふれていた。
中華系移民が多く住むバンクーバーでは当たり前の光景だったけど。
最初はほんとにここが北米かよ? って驚いたっけ。
それらを横目に、小走りで数ブロック移動して、ジョージアストリート沿い、乱立するオフィスビルの中の一つへ飛び込んだ。