ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

「この前はあの2人、六本木のリッツで見かけたのよね。あんな感じで顔寄せ合ってるとこ」

どうして……奈央さん?

黒い、黒い何かが、胸の中に広がっていく。
信じてるのに。
信じたいのに。

醜い何かに、心が浸されていく。

「つきあいたての初々しいカップル、って感じじゃない? まだ体の関係じゃないけど、お手てつないで、キスくらいはしてる、みたいな。今度の週末、おうち飲みデートで、そのまま初めてのお泊まりってとこかしらぁ? きゃっかわいいっ♪」

ライアンに勝るとも劣らない、ナディアの流暢な日本語がオレを追い詰める。
そのままリアルに脳内描写してしまったその情景に、
体内の血液が一気に沸点を越える。

まさか……まさか、奈央さん……ほんとにそいつと?
そいつのこと……?

たまらなくなって立ちあがろうとしたオレを、ナディアがガシッとつかんだ。
「やめなさいよ。こんなところで修羅場なんて。子どもみたいなこと」

「お前が呼んだんだろ!」

「後でゆっくり話し合えばいいじゃないの」

「ほっとけよっ! お前には関係ないだろっ」
掴まれた手を怒りのままに振り払う。
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