ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
起き上がり様、無意識にとったオレの構えを見て、
「空手か……やるじゃないか」と、男がぼそりとつぶやいた。
「随分な挨拶ですね。御社では名刺交換代わりだとでも?」
「な……何するんですか! ここ病院ですよ!?」
相馬さんが狼狽えながらオレたちの間に入って叫んだけど。
「ちょっと中に入ってて。俺はこいつと話があるから」
そいつは押し出すように相馬さんを病室の中に入れ、後ろ手にドアを閉めた。
「話って何ですか。オレ、早く彼女に会いたいんですけど」
構えをといて気色ばむオレを冷然と見据えて。
彼は口火を切った。
「単刀直入に言うぞ。彼女を俺にくれ」
「……は?」
何、言ってるんだ、こいつ。
「もう見てられない。平気なふりしてギリギリのところで踏ん張ってる彼女なんか。それで恋人ってよく言えるよな? 俺なら、彼女にそんな思いはさせない。ずっとそばにいて、抱きしめて、彼女のことだけを考える」
「オ……オレだって……」
「経営の勉強なら、日本でだってできるよな? せっかく両想いになったのに留学って、俺には逃げてるようにしかみえないね」