ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
6. 故郷
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
眠気を誘う緩やかな振動が、もたれたドアから伝わってくる。
列車の窓の向こう、陽だまりの中に過ぎ去っていくどこまでも和やかな景色を、
オレはぼんやりと眺めていた。
一体オレは、何のために日本に戻ってきたんだろう——?
『新逗子方面へお越しのお客様はお乗り換えください』
アナウンスで我に返って、列車から降りた。
京急線、金沢八景駅。
神奈川県の横浜市と横須賀市、その境界にあるこの駅は、
だだっ広いプラットホームが、地上より高めに設置された高架駅だ。
そこに立つと、空がほんの少し近くに、広く感じられる。
オレは、ここから眺める駅前ののんびりした景色が、とても好きだった。
本当は、奈央さんと一緒に見たかったのに……。
懐かしいその風景から目を反らして、階段へと足を向けた。
駅前の本屋や喫茶店、変わらない昔ながらの店構えを通り過ぎて、
平潟湾を望む国道に出てから、住宅街の中へ。
静かな道を5分も歩くと、白い3階建ての建物が見えてきた。