ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
親父の息子じゃなかったら。
一人の男として、奈央さんと出会えていたら。
職場の後輩でも、取引先の営業マンでも、なんでもいい。
そうしたら……
すべては違っていただろうか。
「拓巳……?」
ハッと振り返ると、リビングのソファに座って新聞を広げた親父が、
あっけにとられてオレを見上げていた。
「た、ただいま」
心の声が聞こえたかと、オレは少し言葉を詰まらせた。
「な……どうしたんだ。いつこっちに……」
少し白髪が増えたな。そんな、どうでもいいことを考えながら、オレはコートを脱いで親父の向かい側のソファに腰を下ろした。
「お袋は?」
「……買い物に、出てるけど」
「そっか」
「一体どうしたんだ、突然連絡もなしに。びっくりするじゃないか」
「…………」
口を開けば恨み言が飛び出してしまいそうな気がして、
しばらく黙っていた。