ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
「何かあったのか?」
新聞をたたみ、心配そうにオレを見る親父に、少し笑う。
何か……あったよな。確かに。
話すつもりで来たわけじゃない。
何も、話すつもりはなくて。
ただ少し顔だけ見て、元気でやってるからって
笑って帰るつもりだったのに。
どうしてだろう?
オレの口からは、言葉が自然に零れ落ちていた。
「……つきあってる人がいるんだ」
スイッチをオンにしたみたいに、いきなり親父が破顔した。
「そうかそうか、紹介してくれるつもりで帰国したのか? もしかして、一緒に来てるのか!?」
腰を浮かせて、オレの背後を見て。
いや、一人だし。見りゃわかるだろ。
オレの表情が硬いことに気づいたんだろう。
「どうした? 何か……訳アリの子なのか?」
再び腰を下ろして問う。
訳アリ?
あぁそうだよ。親父も、関係者なんだからな。
半ばヤケになっていたのかもしれない。
ろくに考えもせず、オレは吐きだしていた。
「彼女の名前、沢木奈央っていうんだ」