ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

すごいな……。オレは密かに舌を巻いた。
これだけの会話で、親父は飲み込んだらしい。
その言葉の意味を。

「……奈央をカナダにさらっていこうと、そういうつもりなんだな?」

オレは、頷いた。

「いきなり行き先を変えたから、何かあるとは思っていたんだが……」
親父がうめくように言う。

そうだ、
だから、カナダを選んだ。

テロを警戒して、審査が年々厳しくなっているアメリカに比べて、
移民に寛容な国として知られるカナダを。

この国なら、雇用主のサポートなどの条件さえ満たせば、
パーマネントレジデントカード、つまり永住権を得ることが可能で。
ライアンの父親に手伝ってもらって、奈央さんと2人でカナダに移民できたらと思っていた。

彼女が過去を振り返らなくていいように。
悩まなくてすむように。

もう、彼女を放すつもりはなかったから。
たとえ親父やお袋と、縁を切ることになっても。

そうするつもり……だったのに。
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