ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
「……で? どうして過去形なんだ? もう香澄に話して、反対されたのか?」
静かな声が降る。
雪のように、音もなく。包み込むように。
あぁ……やっぱり。
この人には、かなわない。
オレは、力なく肩をすくめてみせた。
「まだ、プロポーズもしてない」
「え?」
「……わかんねぇんだよ……」
声が、震えてる。
やっぱり、だめだな。
この人の前だと、いつも昔のオレが顔を出しちまう。
『先生』ってこの人を呼んでいた、ガキの頃のオレが——。
「オレ、あの人に愛してもらう資格、あるのかな……オレじゃない方が、彼女のこと、幸せにできるんじゃないかな……」
あの人は、オレについてきてくれるだろうか?
あの話を聞いても、まだ……?
「誰かを好きになるのに、資格が必要なのか?」