ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

「え?」
顔を上げると、親父の穏やかな顔があった。

抱き寄せるのでもなく、突き放すのでもなく、
ただその中心にあるものを見透かすような、落ち着いた眼差し。

昔からオレは、この人のこの目に弱かった。

「試験でも受けてパスしないと、好きになっちゃいけないのか?」

「それは……」

「大事なのは、お互いの気持ちだと、私は思うがね。お前は信じてないのか? 受け入れてくれた奈央の気持ち。それから、自分の奈央への気持ち」

「……奈央さんへの、気持ち……」

親父は、何かを思い出したように、ふふっと微笑んだ。
「覚えてるぞ。確かお前が高校生の時だったな? 奈央に会いたいと言い出したのは」

う。
覚えてたのかよ、そんな昔の話。

「私は無理だと言った。彼女は会ってくれないだろうと。その理由も話した。でもお前は私の言葉を無視して、彼女に近づいたわけだな?」

「そ……それは……その、あきらめられなかったから」

「それくらい、強い気持ちだったわけだろう?」
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