ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
7. 惹きあう心
夕方新宿駅に着いたオレは、人ごみを抜け、
もう一度トワズの店舗を訪れた。
あのリングはもう手に入らないけど……
やっぱり、オレたちの思い出のブランドだから。
贈るなら、ここのがいいんじゃないかって気がして。
……来てはみたものの。
どれがいいだろう?
無数のリングが主張するショーケースを見つめ続けて、
まばゆすぎる光の残像が、オレの視界を真白く覆い始める。
この前のリングは、直感で気に入ったんだけど。
いざ選ぶとなると、いろいろ余計なことを考えてしまってだめだな。
奈央さんはあまり普段アクセサリーとかつける人じゃないから、
好みもわかんないしな……。
「あのっお客様!」
ふいに声をかけられて。
顔を上げると、あのショートカットの女性スタッフが立っていた。
「あれ君……」
もしかして、怪しい奴に見えたかも?
ブツブツつぶやきながらショーケースを眺めたりして。
「エンゲージリング選びって……難しいですね」
あのリングがあれば、なんて未練が口調に出ないように、極力さらりと言った。