ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
ところが彼女は。
頬を紅潮させて、「ちょっとお待ちください!」と叫ぶやいなや、バタバタ店の奥に引っ込んでしまった。
な……なんだ? 一体。
唖然としながら立ち尽くしていると。
すぐにコツコツッと駆けるヒールの音が響き、
戻ってきた彼女が差し出した、そのビロード張りのケースに入っていたのは……
え?
あのリング……だ。
「……どうして……?」
まるで自分のことみたいに、彼女はうれしそうに話しだした。
「お客様の話を本社の社員にしましたら、広告撮影に使用したものでよければ、本社保管になってるものがあるからって、これを。必ず、その方はまたお店にいらっしゃるだろうからって」
また、いらっしゃる……?
って、どうしてわかったんだろう?
でも……
そのリングにまた会えたことは、純粋にすごくうれしかったから。
オレは迷わず手を伸ばした。
「あらやだ佐伯さん、そんな訳アリ商品、お客様に出すもんじゃないわ」