ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
「What’s happen? Any problem?」
向かい側のブースから、中国人スタッフのジャスミンが顔をのぞかせて、
オレたちを交互に見る。
「Oh, my dear…please listen…」
ライアンが口を開きかけるから、オレはギョッとして腰を浮かせた。
「余計なこと言うなっ!」
「オーケーオーケー……わかってるって」
手を振ってオレを黙らせると、
ライアンの顔が、女子向けにギアチェンジした。
つまり、甘ったるいスマイルが浮かぶわけ。とろけそうなやつ。
ちょっと呆れるくらい器用な奴だよな。ほんとに。
そしてライアンは、ジャスミンのブースへ顔を寄せて、何やらささやき始めた。
ヤツの行動パターンから察するに、今夜の予定でも聞いてるんだろう。
中国語はさすがにわからないから、ただの想像でしかないけど。
パソコン越し、ジャスミンのうっとりのぼせあがった顔が否応なしに視界に入ってくる。
まぁ、友達ってひいき目を差し引いても、ライアンは男前の部類に入るからな。
実写版ディズニーに登場しそうな、バリバリのヨーロピアン王子チックな顔してるし。
オレは2人の間に交わされる言葉の、そのイントネーションに耳をすました。
坂を転がるボールのように加速度をつけて流れながら、時に蹴りあげられたように予測不可能にジャンプする。
それはとても、独特の響きを持っていた。