愛を教えて
「そう言うなってー。なーんの取り柄もない奴は勉強するしかできないんだから」
女の肩を抱き、頭を撫でながらあたしを一瞥して笑っているだろう男。
振り向かなくてもわかる。
いつもそうだから。
勉強ができることへの僻みか、それともただの嫌みか。
まぁどちらにせよあんな不良たちと関わるつもりは毛頭ない。
気にかける必要もない。
参考書に向かいながら自分に言い聞かせていると授業終了のチャイムが鳴った。
「じ、じゃあ今日はここまで。お疲れ様」
教師はそう言って足早に教室を出ていった。
「やっとお昼なんだけどぉ~もぉウチちょー疲れたぁ~」
「俺もだわー。皆でどっか飯行くかー」
二人の発言にその他取り巻きが同意しクラスの不良はやっとどこかへ消えていった。
そのことに息を吐いて財布だけ持って立ち上がる。
今朝は弁当を作る余裕がなかったので購買に寄ってからいつものように国語準備室へ向かった。
国語準備室はこの学校に入って1週間くらいしたときにたまたま国語教師と仲良くなって、教室から逃げたいときに使わせてくれるようになった。
イケメンと騒がれている教師だから学校の連中には知られないようにしなくてはならないが。