愛を教えて


あたしの気持ちを読み取ったのか、そんなことを言う久遠に苦笑いする。



「じゃあさ、抱いてよ。これでもちゃんと、体は守ってんだよ?」



あたしが国語準備室に通うようになったとき、久遠に言われたのだ。



自分を大切にしろ、と。



「あんたの言う通り、大事にしてるから殴られるんだよ?この痣も、この痣も、全部あんたを愛した代償だ」



痣のあるところ一つ一つに久遠の手を持っていきながら、耳元で妖しく囁く。



あたしの行動に喉を鳴らす久遠にふっと笑った。



久遠に会うまで、こんな痣はなかった。



だって体を差し出していたから。



殴られるよりマシだと思っていた。



もう痛くないから。



目を閉じていれば、快感さえあると錯覚していた。



でも、久遠があたしに気づいてくれて、なんとなく、違うなと、そう思った。



今でも、体なんて差し出してしまえばと、理不尽な痛みから逃げたくなる。



それでも、痛みは一時だけど、体を許してしまったら、精神的な苦痛は死ぬまで続くと、そう久遠に気づかされた。



「あんたに気づかされたんだよ。だからさ、あたしに気づかせた責任、ちゃんととってよ?あたしの体、あんたで上書きして」



自分から誘うのは1ヶ月ぶりか。



初めて久遠に声をかけられたとき、だったらあんたで上書きしてと、泣いて縋った。



< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

どこまでも甘く~sugar and maple~

総文字数/559

恋愛(キケン・ダーク)2ページ

表紙を見る
○○さんと。

総文字数/6,942

恋愛(キケン・ダーク)16ページ

表紙を見る
ねぇ、愛してよ…-私に愛を教えて下さい。-

総文字数/14,999

恋愛(その他)32ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop