愛を教えて
あたしの気持ちを読み取ったのか、そんなことを言う久遠に苦笑いする。
「じゃあさ、抱いてよ。これでもちゃんと、体は守ってんだよ?」
あたしが国語準備室に通うようになったとき、久遠に言われたのだ。
自分を大切にしろ、と。
「あんたの言う通り、大事にしてるから殴られるんだよ?この痣も、この痣も、全部あんたを愛した代償だ」
痣のあるところ一つ一つに久遠の手を持っていきながら、耳元で妖しく囁く。
あたしの行動に喉を鳴らす久遠にふっと笑った。
久遠に会うまで、こんな痣はなかった。
だって体を差し出していたから。
殴られるよりマシだと思っていた。
もう痛くないから。
目を閉じていれば、快感さえあると錯覚していた。
でも、久遠があたしに気づいてくれて、なんとなく、違うなと、そう思った。
今でも、体なんて差し出してしまえばと、理不尽な痛みから逃げたくなる。
それでも、痛みは一時だけど、体を許してしまったら、精神的な苦痛は死ぬまで続くと、そう久遠に気づかされた。
「あんたに気づかされたんだよ。だからさ、あたしに気づかせた責任、ちゃんととってよ?あたしの体、あんたで上書きして」
自分から誘うのは1ヶ月ぶりか。
初めて久遠に声をかけられたとき、だったらあんたで上書きしてと、泣いて縋った。