【短編】明日をゆくポラリス
明日をゆくポラリス
しんしんと降る雪が冷たい。全ての色を塗り潰すような白い雪も、それを降らせる薄暗い空も、新雪を踏みしめる音も、息を吐くと肺が冷たい空気に満たされる感覚も、全て慣れた光景。わたしたちの愛する故郷。
それは何度も読み聞かせられ色褪せた絵本のように優しく懐かしい記憶だ。同時に、もうあの頃には戻れない絶望が横たわっている。
「ねえロビン、ここは変わらないね」
ここに来てからずっとロビンは静かだ。それがとても違和感だった。だから、話しかけたのに、いつまで経っても返事はなかった。
彼の双眸はただ遠くを見つめ、静かに現実と向き合っているようだった。もう二度と子どもたちの笑い声は聞こえて来ないだろうこのありふれた静かで小さな町の末路を。
わたしたちの住んでいたこの町はとても小さな町だった。でも、子どもたちが4~5人で駆けていく音を賑やかな声、それを優しく見守る大人たちがいるこの町はとても穏やかで、皆が幸せに暮らしていた。わたしもそんな中の一人だった。