私を作る、おいしいレシピ

「本当は教室は火気厳禁なのよ」

「知ってるよ。だから火災報知機から遠いところ見つけてやってんじゃん。それよりおにぎりよこせよ。今日は焼いて食おうぜ」


ご丁寧に網まで持ってきている。
私はおにぎりの袋を渡し、自分はさっきもらった紙コップをすする。今日はうどんだ。おいしそう。


「瑞菜は本当に一個で足りるのか?」

「おにぎりだけだから二つ食べてたけど、おかずがあるならそんなにいらないもん」


持ってきているおにぎり五個の内訳は、仲道くんと酒田くんが二個ずつで私が一つ。
のりはパリパリが好きなので別に持ってきていたから、白米状態のおにぎりを網に乗せる。

それまでぐつぐつといい音を立てていた鍋は、仲道くんがいつも読んでいるグラビア雑誌の上に置かれ、酒田くんがお代わりをよそっていた。


「でもこの材料ってどうしてるの?」


私の疑問に答えたのは仲道くん。


「俺んち、農家だから野菜余ってるし。肉は冷凍してあるのを持ってくると昼にちょうどいいくらいに溶ける。スープもペットボトルに入れてくりゃ手間かかんないし」

「へぇ」

「飯は交代でもってきてたんだけど、瑞菜が来てから楽になった」

「あっそ」

「そろそろいいんじゃね?」


酒田くんが舌なめずりをする。確かに、網の上のおにぎりからは香ばしい香りがする。


「おこげが旨いんだよな」

「うちもおにぎりだけは余んねぇんだよな。何気、一番の売れ筋商品な気がする。でも、俺、東條んちのおにぎり好きだぜ。握り加減がちょうどいい」


小さいヤンキーがにかっと笑う。

彼は慣れるとすごくフレンドリーで、笑うと可愛らしい。
小さいから、弟を思い出すんだよな。弟と最後に会ったとき、ちょうどこのくらいの背丈だったもんだから余計重ねてしまう。

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