私を作る、おいしいレシピ

「そう。ありがとう」

「焼けたぞ、食おうぜ」


そうして始まるお昼ご飯。
温かい料理がそれだけで二割増しおいしくなるってことを、私はこのふたりと出会って実感した。

昼休みの時間も限られているから、仲道くんが作るのは、うどん、みそ鍋、しょうゆ鍋のローテーションなんだけど、その頻度で食べてもあんまり飽きない。


「うまいだろ」


毎日のように聞かれる言葉。
ええホント、おいしいです。でもそれを肯定しちゃうとこの違反行為を認めてしまう気がして悔しいのでこう言っておく。


「まあまあ」

「強情だな。いつか絶対うまいって言わせてやる」

「なんでそんなに突っかかってくるのよ」

「むかつくからだろ」

「じゃあ絶対言わない。賭けてもいい」

「卒業までにお前にうまいって言わせたら俺の勝ちってことだな。楽勝じゃん」

「馬鹿ね。このローテーション続けてたら味に慣れていくんだから、不利なのはアンタの方よ」

「言ったな? お前が負けたら俺の言うこと聞いてもらうからな」

「そっちこそ! 卒業した暁には高級ディナーを私におごる羽目になるわよ」


私たちの言い合いを、酒田くんは呆れたように見ている。


「ふたりとも、面倒くさいなぁ。飯がまずくなるからやめろよ」

「だってよー、せっかく作ってやってんのに」

「いいじゃん。東條が言わなくたって俺が言ってやるよ。ハジメの飯はうまいーうまいー」

「同情ならいらねぇ!」


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