私を作る、おいしいレシピ
「はい。洗えたよ」
「ご苦労、下僕」
「誰が下僕よ!」
「お前だろ。なぁ、明日はわかめご飯がいい」
「俺ごま塩!」
「まったく、あんたら結構図々しいよね?」
憎まれ口をたたきつつ、結構幸せな気分だ。
女友達に感じるのとは違う、一緒にいて安心って気分がすごく心地よい。
「あ、やばい、予鈴だ」
天井から鳴り響く音に、私は慌てるけどふたりは飄々としたままだ。
「なんか腹もいっぱいで眠くなってきた。瑞菜も一緒にさぼろうぜ」
「嫌だよ。教室戻るよ? ほら、酒田くんも行こう」
彼の手を掴んで引っ張る。
「ええー」と嫌そうな顔を上げつつも素直についてくるあたりは可愛い。数歩下がって仲道くんも後ろからついてきていた。
とはいえ、妙に人の視線を感じるな。
確かに私と酒田くんの取り合わせって珍しいから、目立ちはするのかもしれないけど。
「真面目だな、東條」
「真面目ってか。自分の為じゃん。さぼってなんかいいことある?」
「楽じゃん」
「楽しても仕方ないでしょ。ちゃんと卒業していい仕事つかないと、自分のこと養えなくなるじゃん」
「…………」
酒田くんは急に押し黙って私を見る。
「私、反抗してる暇あったら、早く独り立ちしたい」
それは本心だったのだけど、酒田くんはバツが悪そうな表情でして、後ろの仲道くんを振り返っていた。