私を作る、おいしいレシピ
昼過ぎに母が出掛けてから、私はもらったお金を持って、自転車に乗った。
今日は米を買わないといけないのだ。
仲道くんたちとお昼を食べるようになってから米の減りが早い。お手伝いさんだって、変な勘繰りを入れているに決まっている。
親に報告されるとか本当に面倒だから、ばれないようにこっそり戻すためのお米が必要だ。
朝ご飯の時に広告を見比べていたら、ちょっと遠いけど、駅の近くのスーパーがお米の安売りをしているようだった。
駅までの道をまっすぐ進み、途中で左に曲がれば高校への道がある。
二次募集とはいえ、ここの高校を選んだのには、自転車通学できるからという理由もあった。
通学に長い時間をかけるのは、その学校じゃなきゃ勉強できないことがある!みたいな大きな志でもない限り、無駄以外の何物でもないと思うんだよね。
数量制限のある五キロの米を無事に手に入れることができ、満足して自転車のかごに入れる。
重たいから重心が安定しない。ふらふらになりながら運転していると、急に進まなくなった。
あれ、と後ろを向けば、自転車の荷台を押さえている男がいるではないか。
金に近い茶髪、だぼだぼとしたズボンにジャラジャラ音のなるチェーンベルト、白のTシャツに黒のパーカーを羽織ったそのでかい男を私は知っている。
「仲道くん?」
「やっぱ瑞菜じゃん。何してんの」
「見りゃ分かるでしょ。買い物」
「ふらふらじゃん。持ってやろうか」
「いいよ。重いし」
「チャリごとだよ」
次の瞬間にはハンドルを奪われ、私はサドルからお尻を下ろす。
背の高い仲道君が持つと、私の自転車が小さく見えるな。
結局、仲道くんに押してもらって、ふたりで並んで歩いた。