私を作る、おいしいレシピ
「ああ? また来たのかい、ハジメ君。いいよ、あんたも休憩行ってきな。シュークリームの切れたのあるから」
「よっしゃ! サンキュー」
どうやら仲道くんが大きいので、私の姿は見えていなかったよう。
酒田くんがシュークリームを三つ抱えると、おばさんは「なんで三個?」と首を傾げた。
「あ、すいません。私」
挨拶しようかと思ったら、お客さんが来たらしく、おばさんは慌ただしく行ってしまった。
「……私までもらっていいの?」
「いいよ。どうせ捨てちゃうやつだし」
ニカッと笑う酒田くんは、今日はトレーナーの上からエプロンをしている。いつもはぼさぼさにしているくせっ毛は、たくさんのピンでとめてあっておでこが出ているから、可愛いやんちゃ系男子にしか見えない。
「お手伝いとかするんだね、酒田くん」
意外過ぎて言ってみたら、酒田くんはちょっと不貞腐れたような顔をする。
「そりゃ、俺、いつかここ継ぐもん。ホントは高校とかだって行かなくてもいいんだけどさ。親が出とけっていうから」
「そりゃ、今どき高校くらい出なきゃ、まともな就職先だってないしねぇ……」
ここを継ぐなら必要ないとは思うけど、今時、コンビニだってつぶれることがあるもんなぁ。
それを見越して親は高校を出ろと言ってるっていうことだ。
なんだ、こんなナリしてるくせに、家族仲はいいんじゃない。
「まあ、バイト代の半分は借金返済に使われるんだけどな」
「借金?」
「んー、親にだけどな。改造制服って結構金かかるんだぜ?」
短ランとかダボダボズボンのことか。
なんだこういうのって自分で買うんだ?
そこで仲道くんも楽しそうに話題に入ってくる。