私を作る、おいしいレシピ
「だよな。普通の制服なら買ってやるけど改造は駄目だって言われてよ。俺も自前で買った。上下合わせて刺繍代入れて十万近かったぜ?」
「はあ? そんなにお金出してまでなんで改造すんの」
「そりゃあれだ。個性ってやつだろ」
そんな個性いらないよ。無駄じゃん。
十万あったら貯めたほうがどんなにいいか。
酒田くんはシュークリームかぶりつきながら私を見る。
「まあ、働くのは好きなんだ。俺的には卒業さえできればいいわけ。お前が言うようにさ、真面目にする理由がないんだよ」
拗ねたような顔でそう言われると言葉に詰まってしまうな。
この間、私が言ったこと、まだ気にしてたんだ。
でもさ、卒業さえできればいいっておかしくない? だったら何のために親は授業料払ってるのよって感じだし。
「理由なんかなくても真面目にできるほうが格好いいよ」
悔しさ半分でそう言ったら、酒田くんはますます拗ね顔になって唇を尖らせた。
仲道くんは笑って、「その押し問答意味ある?」なんて場を茶化し始めた。
確かにね、私には関係ないんだけど。
酒田くんや仲道くんがどうなろうとさ、知ったことじゃないけど。
でも、その恰好だけが原因で先生や皆から悪く印象に見られているなら、なんかすごく悔しいから。
「何膨れてんだ」
頭をぽすっと叩かれた。
何すんのよって思ったけど、仲道くんの顔を見たら言えなくなってしまった。
だって、思いのほか優しく笑っていたから、なんでか胸が詰まったように苦しいんだもん。