私を作る、おいしいレシピ

「なんでもないよ」


そんな風に突っぱねるのだけが精一杯。
やだな。
なんでこんな胸がドキドキするんだ。こんな男に? いやいや、ありえないから。



十五分くらい話して、仲道くんは立ち上がる。


「じゃあ、あんま邪魔しても悪いから帰る」

「あ、そうだね。邪魔してごめんね? 酒田くん」

「別に邪魔じゃねーし。また来いよ。俺、大抵裏にいるから。こっちから入ってこいよ」

「うん。実は通学路だから。また寄らせてもらうね」


そんな挨拶を交わして、コンビニを出る。
酒田くんはああして真面目に勤労学生してたんだな。びっくり。
それにしても、仲道くんはなぜ今日ここに来たのだろう。


「ああやって残り物とか食べられるっていいね」

「まあな。俺ら的には助かるけど、あいつんちの経営については心配になる」

「確かに」


仲道くんは長い脚で自転車をまたぐと、私を振り仰いで荷台をたたいた。


「お前んちまで持ってってやるから、乗れ」

「いいよ。甘いものも食べたし、元気百倍」

「まあそういうなって。俺も今日は暇だから。天気もいいし。散歩がてらだよ」


仲道くん、家は農家って言ってたっけ。なんかのびのび育ったんだろうなぁって感じ、すごくするよなぁ。


「でもここは学校近いから。ふたり乗り見つかったら怒られるじゃん」

「じゃあさっきの曲がり角まで歩くか」


ご納得いただけたようでありがたいです。

たまに、部活に向かう生徒とかを見て、なんとなく視線を感じる。
この自転車が通学用のもので通学許可証とか貼ってあるから私服でも学校がばれちゃうのが嫌なところよね。

まあでもいいか。
天気はいいし、些細なことなんて気にしていると疲れちゃう。

< 25 / 62 >

この作品をシェア

pagetop