私を作る、おいしいレシピ
「仲道くんちって何の野菜作ってんの?」
「うちか? 色々。出荷用だと白菜、大根、ネギ、ニンジン、水菜、ジャガイモとか。自宅用にニンジンとかカブとか大豆とかも少しあるぞ」
「結構手広いんだね? じゃあ家は遠いの?」
このあたりじゃそんなに大きな土地ないもんなぁ。
「そうだな。本当は通学区域じゃねぇんだろうけど、田舎に高校ないからオッケー出たんだ。でも、一時間くらいかかる。その分朝とか忙しいわけ。親は早朝から畑に入っちゃってるしさ。弁当なんか作ってる暇ねぇし、だったら学校で作っちまう方が楽だろ」
親が忙しいのは、私と一緒か。その割に、私とは違うよなぁ。
ヤンキーって言っても、見た目だけっていうか。
人を脅してくるようなところはないし、こうして重たいお米を持ってくれるくらいの優しさはある。
見た目って何なんだろうな。
私みたいに真面目にしてれば賢いってことなんだろうけど、でもこうして話していると、人生を楽しんでいるのは仲道くんみたいな人な気がする。
「お前、米しか買ってないけど、他のもんちゃんと食ってんの?」
「ああ、うん。大丈夫」
「肉食わねぇからこんな小さいんだぜ?」
むぎゅ、という初めての感触。大きな手が、私の胸をつかんでるじゃありませんか。
「――っ!」
私の体中に鳥肌が立った。
ちょ、待ってよ。乙女の胸になんてことを!
私は思わず、自転車を蹴りつけた。
一緒によろけて、仲道くんまで道路に転がる。米袋も道路に落ちたけれど、かろうじて穴はあいてなさそうだ。
ああ結構な大打撃。
「いてぇっ」
「馬鹿!」
赤くなって動揺していること自体も恥ずかしくて、とにかく仲道くんに文句を言う。