私を作る、おいしいレシピ
「ラストのとっておき、瑞菜食うか?」
煮詰まって、色が茶色っぽくなってしまったうどん。
実は私、さらりとした時よりもこのくらい煮詰まったのが大好き。
イチくんによそってもらって、はふはふ言いながら食べてたら、頭上から「うまいだろ」と聞こえてきた。
「うん、すっごくおいし……」
反射で答えている途中に気付いた。
私、そういや、この人と賭けをしてなかったっけ。
恐る恐る顔を上げると、満面の笑みでガッツポーズしているイチくんとご対面。
「やっと言った」
「あっ、ちょ、今のなし」
「いやだよ。聞いた。俺の勝ちだな。さーて何をやってもらおうかなぁ」
「ハジメ、瑞菜にあんまり変なことやらせるなよ」
マコちゃんがそういってくれたので、ほっと胸をなでおろす。
そのまま話は流れちゃって、賭けの勝敗についてはひとまず保留となった。
こんな日がずっと続けばいいのに。
楽しくて、そう思いながら片付けようと鍋をもってトイレ前の洗面台に向かおうとした時だ。
「何をしてるっ」
大きな声怒鳴り声に、私は思わず鍋を落とした。
ガラン、ゴトンと大きな音が人気のない廊下に鳴り響く。
音を聞きつけ出てきたイチくんとマコちゃんは、かばうように私の前に立つ。
「お前たち、いったい何をしていた」
鋭い声でそういうのは私とマコちゃんの担任である阿部先生だ。先生の後ろには、会長の姿も見えた。憎々しい目でイチくんとマコちゃんを見つめてる。