私を作る、おいしいレシピ
「なんだよ。昼飯食ってるだけだろ」
マコちゃんが反論するけど、阿部先生はにらんで押しのけた。
「真面目な女生徒を連れ込んで、こんなところにコンロなぞ持ち込んで。お前らだけなら見逃してやれるが、人を巻き込むな」
「きゃっ」
先生はふたりを押しのけて私の手首を掴んで引っ張った。……と思ったら、逆方向の腕をイチくんに引っ張られて、私は両手を広げた状態になった。
「センセ、女の子になにすんだよ。離せよ」
「そっちこそ離せ。真面目な東條を巻き込むなと言ってるんだ」
「先生! 私巻き込まれたんじゃないです。自分からここに来てたんです。コンロの持ち込みがいけないのはわかってます。処分するなら私も一緒にしてください」
必死に言ってみたけど、先生はなぜか私には笑いかけるだけだ。
「東條、脅されてるんだろう。大丈夫だ。先生たちはわかっているから」
どうして、話を聞いてくれないの。違うって言っているのに。
「何にもわかってないじゃない……っ!」
「お前ら、東條になにを言ったんだよ。すっかり洗脳されてるじゃないか」
後ろから、会長までもそんなこともいう。
「違うってば。私は」
話を聞いてくれない先生を見ていると、過去の両親の顔を思い出す。
両親は、弟を私から遠ざけた。悪い影響を与えないように、と。
先生や会長は、私の両親とおんなじ。
自分の価値観だけが大事で、違うものからは遠ざかればいいと思っている。
言われたこちらが同じ人間だなんてこと、考えてもいない。