私を作る、おいしいレシピ
会長が腕時計を確認して、私の手を引っ張る
「やべ、俺行きます。ほら、東條も」
嫌だったけど振りほどけなかった。
ただただ苦しくて頭が回らない。
イチくんとマコちゃんを見つめるけど、ふたりは視線を合わせてくれなかった。
こんな風にばれてしまったことを、怒っているのかもしれない。
「……ごめん」
私の口からは自然にそれだけがこぼれ出た。そのまま、会長に引きずられるように廊下を歩く。
「お前らがサボっていいってことにはならないんだぞ」
背中にお説教を始める阿部先生の声をききつつ、速足で歩く会長についていくと、彼は旧校舎を出たあたりで立ち止まった。
「東條、あんな奴らとつるんでたらだめだよ」
“アンナ奴ラ”
その見下した言い方が癇に障った。
「……どうしてよ」
体の中に、怒りと悲しみ、二種類の吹き溜まりができている。
どっちも大きくて、どちらが先に噴き出すか、わからない。
「俺ら生徒会だぜ? 生徒の見本にならなきゃ……って、本鈴だ。俺行くから」
私の反応になんて興味なしで、会長は自分が遅れないほうが大事だからかさっさと行ってしまう。
なにが生徒会。
見本ってなによ。成績が良くて素行が良ければそれでいいのか。
勝手に人をできるやつできないやつなんて分類するような、上から目線の物差しで測れる人間が偉いっていうなら、私はそんな奴になりたくない。
「……っ」
そのまま私は踵を返して、一階にまで降りて、トイレにこもった。
授業なんか、出れる気分じゃない。