私を作る、おいしいレシピ
授業が始まってしばらくたったなと思った頃、こっそり出て、先生の声が響く廊下を足を忍ばせながら歩き、裏庭に向かう。
イチくんたちと話そう。
さっき、ふたりはサボるって言っていたけど、普段はどこにいるんだろう。
新校舎はたいていの教室が授業中だから、裏庭か旧校舎だろうとは思う。
時々、巡回の先生の足音に慌てて隠れたりしながら、探し回ること十分。旧校舎の一階で背中に声をかけられた。
「あれ、瑞菜? どうした?」
「イチくん」
廊下の視覚をうまく利用して、出っ張った柱の陰の壁に寄りかかって雑誌を読んでいたらしい。
私を見つけると、おもむろに立ち上がった。
「なんだよ、せっかく誠がとりなしてやったのに、授業サボったのかよ」
「だって、私のせいで。お昼……これからは見張られちゃうかもしれない」
先生たちは、もともと彼らのことは放置状態だったんだから、私がいなければ、見つかるはずはなかった。
そこに私が入ったから、こんなことになったんだ。
イチくんやマコちゃんの大切な空間、壊したのは私だ。
「ごめん。ほんとにごめん」
泣きたくなって頭を下げたら、今度は後ろからポンと頭を叩かれた。
「謝るなよ。別にお前のせいじゃない」
振り向くとすぐ後ろに、同じ目線のマコちゃんがいた。
男らしい発言に、小さい彼がすごく頼もしく見える。