私を作る、おいしいレシピ
その一瞬のためらいを、多分マコちゃんは見逃さなかったと思う。
目を伏せたその瞬間に、何か言わなきゃと焦って言葉を探す。
「あ、あの」
「そっか」
でもそれより先に、イチくんが私の肩をつかんでマコちゃんとの間に入ってきた。
そして、マコちゃんを見て悲しそうに笑う。
「悪いな。俺もだ」
「え……」
私もマコちゃんも意味が分からず、瞬きを繰り返した。
俺もって何が。
ドキドキが急速に加速してきて、もう呼吸するのも苦しい。
私とマコちゃんの視線を一身に浴びながらも、イチくんは少しも怯むところがなかった。
「俺も瑞菜が好きなんだよ。俺らライバルだな」
マコちゃんが息をのんだ。
私も、嬉しさよりは驚きのほうが勝った。
だってここで言われたって。どうすればいいのかわからない。
イチくんは、嘘はつかない。それは知ってる。だから、そういってもらえるの嬉しいけど。
だけど私はちゃんと返せる言葉を持っていない。
ふたりが大切だから。
ふたりといた時間が、とても大切だったから。
たとえイチくんが好きでも、この告白には答えを出せない。
ここでひとりを選ぶなんてこと、絶対にできない。
「ごっ……ごめん」
私の上ずった声に、ふたりはそろってこちらに注目した。
「私は、……どっちも好きじゃないや。……ごめん。もうお昼も、……こないね。迷惑かけるから」
顔を見ていられなかった。
言った先から後悔しながら、にじむ視界のイチくんとマコちゃんを脳裏に収める。