私を作る、おいしいレシピ
「……お母さん」
「なによ」
「お金なんかいらないから一緒にいて」
決死の思いで言ったのに、お母さんは、変なものを見るように私を二度見した。
「何言ってるの高二にもなって」
「毎朝毎晩、ご飯を一緒に食べて。休みの日に一緒にでかけて? 龍矢にも会わせてよ。姉弟なのに、もう二年くらい顔見てない」
「……龍矢は勉強が忙しいのよ。あなたみたいに好き勝手しているのを見たら、自分に自由がないって思って可哀想でしょう? もともと、あなたがちゃんと受験に合格していたらこんなことにはならなかったのに」
「私のせいにしないでよ!」
次から次へと、母への不満が湧いて出てきた。
今まで、仕方ないと諦めていたつもりだったけれど、本当には諦めていなかったんだと知る。
だってこんなに、鮮明に覚えている。
保育園の通園の時に伸ばした手。
熱があって苦しいとき、一緒にいてと願った手。
小学校のとき、龍矢が抱っこされているのを見て、私もと伸ばした手。
すべて返されなかったことを、私はみんな覚えている。
小さな傷となって心臓に刻まれている。
握ってほしかったの。
家政婦さんじゃなくて、お母さんの手が欲しかったんだよ。
欲しかった。欲しい。
まだ諦められない。
一緒にいてくれる人を。温かさを共有してくれる人を。
私は本当は、ずっとずっと探してた。
「……とにかく、今になってわがまま言わないで。母さん、忙しいのよ」
私の涙をぬぐうこともない。
あきれたようにため息をついて、お母さんは部屋を出ていく。