私を作る、おいしいレシピ

一人おろおろしていると、後ろからパーンと勢いよく扉の開く音がした。


「ひゃっ」


おびえる私が見つけたものは、大きな体にツンツンと立った茶髪、下に来ている白シャツが見えるほど短い学ランに変形ズボンをはいた男子生徒。

おお……これはいわゆるヤンキー。


「へっ……なんだぁ、お前」


しかも、いきなりガンつけられた!
怖っ。
襲われたらどうしよう!

一瞬怯むも、いやいや私はこれでも生徒会副会長。
ここで負けてはいけないとにらみ返した。


「あなたこそ……」

「あ、知ってる。東條じゃん」


私の声を遮るように、大きな彼の後ろからぴょこんと表れたのは、くしゃくしゃの茶髪にくりっとした可愛い目の男子生徒。しかしながら彼も裏に赤地で刺繍のある短ランを着込んでいる。

この人は知ってる。うちのクラスのヤンキー、酒田誠(さかた まこと)くんだ。
背が私と同じくらいに小さいけど、切れると怖いと有名で、“手榴弾”との異名を持っている。


「さ、酒田くん」

「知ってるのか、誠」

「うん、同じクラス。つか、なんでハジメ知らないの。彼女、生徒会副会長じゃん」

「集会なんてでねぇもん」


つかつかと入ってきたでかいヤンキーと小さいヤンキーは、私を一瞥すると鍋の周りに座って、コンビニの袋を開けた。


「んで、あんたはこんなとこでなにしてんの?」


ハジメと呼ばれた大きいヤンキーが私を見上げる。


「なにって……たまたま通りがかったらいい匂いがして」

「あそ。じゃ、食ってく?」


飄々と言い、コンビニ袋から紙コップを取り出し、二つを重ねた状態のものを三個作った。
そして、大きめのスプーンで鍋の中身を入れる。

< 5 / 62 >

この作品をシェア

pagetop