私を作る、おいしいレシピ
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時は過ぎ、あれから一年とちょっと。
まだ桜も咲かないのに、卒業式ってやつはやってくる。
真冬に戻ったかのような北風の吹くこの日。私は卒業証書を受け取った。


「結局、レンジで昼飯作って食えたの、数回だけだったな」


子供の晴れの日だというのに親が来ない家ってのはあるもので。
私たちは三人ともそんなぼっち組だった。


「教師たちを納得させるのってあんなにかかるんだな。忍耐ないとできねーわ」

「ホント、俺途中でキレそうになったもん」

「でも、これからの子達はあったかいご飯が食べられるよ。それでいいじゃない」

「まーなー」


レンジ設置のアンケートを取り、嘆願書を作って、申請して。
会長の協力を得るまでも一苦労だったから、売店前レンジ設置には予想以上に手間がかかった。

私が生徒会を降りる直前にようやく申請が通り、導入されたのは一月を過ぎてから。
三年生である私たちは、ほとんどその恩恵にはあずからなかったわけだけど、今までパン食だった子たちが肉まん食になったり、耐熱のお弁当箱で作ってきたりと、後輩たちには好評らしくてほっとしている。


「やっぱり、あったかい飯がうまいからな」


ふん、と鼻を鳴らすイチくん。
前と違って、今はダークブラウンになって自然に落ちた髪の毛はツンツンと立てていた時とは打って変わって柔らかそうだ。

マコちゃんは最後の一年でぐんと背が伸びて、服装や髪形も変えたから、一年前の彼と比べたら全く別人みたいになった。“マコちゃん”なんてかわいい呼び名が似合わないかもななんて感じるほどに。
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