私を作る、おいしいレシピ
「じゃあ、俺、店の手伝いあるから行くな」
「おう」
「頑張ってね」
駆け出そうとした酒田くんは、突然くるりと向きなおって私の前まで来ると、有無を言わさずおでこにキスをした。
「ひゃあっ」
「おい、誠」
真っ赤になる私に身を乗り出すイチくん。
マコちゃんはへらりと笑ってキスしたところを撫でた。
「いーじゃん。最後だし。餞別くらいくれよ。……俺がいたから、お前ら付き合えなかったんだろ。もう大丈夫だから、勝手にやれよ」
「なっ」
「素直になれよー、瑞菜。俺が惚れた女なんだからな!」
言うだけ言って、マコちゃんは走って行っちゃう。
ちょっと待ってー!
いきなりそんなこと言われても、どうすりゃいいの。
だって封印してたのに。今更、この気持ちどうにかなるなんて思ってなかったのに。
振り返ると、イチくんが頭をかいてなんとも言えない顔をしてる。
マコちゃんの発言に驚いた様子はない。……ってことは、もしかして、私の気持ちってずっとばれてたのかな。
ずっと、……たぶん最初から、イチくんのことが好きだったってこと。
そう思ったら胸のドキドキは半端なくなってきた。
緊張からぎこちなくなる私に、イチくんはいつもの調子を崩さず話しかけてくる。
「瑞菜」
「はいっ」
きょどった声が出て、笑われた。
なんだよ失礼な、そこ笑うところじゃないよ。