私を作る、おいしいレシピ
「……賭けに勝つ自信あるよ、俺。絶対にお前を笑顔にさせる料理人になる」
決意に満ちた顔を覆せる気はしなかった
だから私は、泣きたい気持ちを抑えて笑った。
「だったら、私はそれまでに、すごいいい女になってやるから。イチくんの好きなボーンきゅっボーンっていうような」
体のラインを手で表わしたら、「そりゃ無理だろ」って笑われた。
即答するなよ、ひどいなぁ。
悔しいから、口を横いっぱいに開いてイーっと言ってやった。
「絶対勝つ!」
「俺もだよ」
だからお別れ?
好きなのに、大好きだけど、一緒にはいられないんだね。
「また会おうな」
笑ったまま、イチくんは私に手を振った。
バックには旧校舎と青空。まるで一枚の絵のように完璧な構図で私の記憶のファインダーに収まった。
これをずっと覚えておこう。負けそうになっても、彼の姿が私をきっと助けてくれる。
私は、精一杯に笑った。声は潤んでしまったけど、顔はちゃんと笑えていたと思う。
「またね!」
桜も咲かない、まだ早い春。
こうして私たちは終わりを告げた。