私を作る、おいしいレシピ

「紙コップだと飲みたくなるよな」

「だよな、ってあちちち、やけどしちゃったじゃねぇかよ」


本当にコップを傾けて飲もうとして、ハジメくんが顔をしかめた。
舌がやけどしたらしい。アホだな。


「ハジメ、水あるよ」

「はよ! くれ!」


ペットボトルをそのまま舌にあて、冷やし始めるハジメくんとやら。

思わず呆気にとられて見つめちゃってるけど、この状況は一体なんなのだ。

戸惑っている私に気付いたのか、ハジメくんのほうが私に湯気の上がっている紙コップを差し出す。


「ほら」


中には白菜とえのきと肉団子の具材が見えた。お汁は味噌ベースかな。いい匂い。
どうやら紙コップを二重にしたのは熱さ対策のためらしい。厚みがある分、持っているほうの手には熱が伝わりづらい。

って、素直に受け取っちゃったけど、これってまずくない?
空き教室で鍋とか、やっていいことと悪いことがあるでしょう。
生徒会副会長として、これを見過ごしちゃっていいのか?


「これ、は、あの」

「んー、昼飯。あ、教師にチクんなよ。お前もう同罪だからな」

「えっ」


しかも仲間扱い!
ちょっとやめてよ。私まで悪の道に引き入れないで。

……と、思いつつ。
手の中の温かい料理は、とてつもない魅力がある。

口の中はよだれだらけ。おなかは……ぐうぅといい音が鳴り響く。

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