私を作る、おいしいレシピ
「ママ、だめ。ぼ、僕やっぱり、青いのでいいから。ピンクはももちゃんの」
たいてい折れるのは千利のほうだ。
だけど不思議なもので、弟が折れると今度は姉のほうも気まずくなるらしい。
「うわああん。だめぇ。ももじゃなくて、千利にあげて。だってせんり、ちっちゃい子なんだからぁ」
最初っからそういえばいいのにね。
まったくもう、面倒くさいねって思うけど。
そういうところが愛おしいとも思う。
私の両親は絶対損をしている。
だってせっかく子供を産んだのに、その成長過程を楽しめなかったのだから。
「二人ともいい子。じゃあゲームで決めようね。今からママが、二個の飴を握ります。右と左、どっちかを選んで、当たった色で文句なしってことでどう?」
百花と千利は顔を見合わせ、笑顔になって「うん!」と言った。
結局、百花が青色で千利がピンク色。
ふたりは飴をなめながら、時折口から手に出しては「きれいね」って言いあう。
汚いなーって思うけど、子供にはきっと、大切な思い出になるんだろう。
「お前ら、あんまりママに寄りかかんなよ。おなかがつぶれちゃうだろ」
「大丈夫だよ」
「大丈夫じゃない。安静って言われてんだから、おとなしくしてろよ」
現在妊娠二十八週。切迫早産で自宅安静を命じられている私に代わって、家事にいそしんでいるのは、私の旦那様。
「イチくんがご飯作れる人で助かるなぁ」
「俺はプロだからな。お前が作るよりうまいだろ」
「いったなぁ?」