私を作る、おいしいレシピ

卒業から再会するまでには、実に四年の月日が経っていた。

きっかけはマコちゃんの結婚式。
彼女を作り、あっという間にスピード婚を果たした彼は、私たちを見て「お前らはバカだ」と連呼していた。

その間に私は夜間の専門学校を卒業して、仕事一本になっていたし、イチくんも調理師の免許を取って、見習いとして働いていた。

久しぶりの再会での最初の一言は「相変わらずちいせぇ胸だな」だよ。

あんまりだと思わない?
一応豊胸運動とか頑張ったんですけど。


「そっちこそ、自分の店はもてそう?」ってきいたら、「そいつはだいぶん先になりそう」って情けない声で答えて、「だからここで会えてよかった」と笑った。

「大海を知らない井の中の蛙でいたときは、自分の店もって迎えに行くなんてすぐだと思ってたんだけどな」って笑われて、「見通し甘すぎだよ」って笑いながら泣いてやった。


それから、なんとなくまた会うようになって、そのうち同棲とか始めて。
相変わらず自分の店はもてていないけれど、二十九歳の時に私の年齢をおもんぱかってか、「いい加減、結婚しようぜ」って言ってくれた。


三十三の時に百花が生まれて、一年後にイチくんは【U TA GE】という店に転職した。店長さんの人柄と、いい給料での引き抜きに飛びついたらしい。

でもそのあと千利を妊娠して体調を崩した私は、正社員からパートへと職種転換したので、相変わらず自分の店を持つ資金はたまりそうにない。
マコちゃんが結婚式で引き合わせてくれなかったら、どうなっていただろうと今でも時々思い返す。
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