私を作る、おいしいレシピ
「早く食わねぇと、昼休み終わるぞ」
ハジメくんにそう言われて、私は思わずその場に座ってしまった。
だって、温かい料理って実は久しぶりだ。朝食はパンだし、夕食はいつも冷めている。
レンジでチンしても、出来たてのおいしさにはかなわないし……。
誘惑に負けて、私はもらった割りばしで具を口に含んだ。
――おいしい!
味のしみた白菜をかんだ時に出てくる野菜の甘みとスープのコクが口中に染み渡った。
予想以上に、私は野菜とか温かいお汁に飢えていたらしい。
止まらなくなってあっという間に汁まですすって中身は空っぽになった。
「ふー!」
満足げに息を吐きだしたら、ふたりとも私の方をガン見していて、バツが悪くなって俯いたら、はははっと笑われた。
「うまいだろ」
にやりと笑うのはハジメくん。
でもでも、本当はこんなのいけないんだよ。
立場上、素直に褒めるのはいけないような気がして、「まあまあ」とだけ答えた。
そしたらハジメくんは、箸をくわえたまま私の頭をでこぴんした。
「嘘つけよ。すっげうまそうに食ったくせに」
おでこと同時に、心臓を打ち抜かれたような気がした。
だって、自分の言葉を嘘だと言い当てられるのは初めてなのだ。
ちょっと動揺してしまうのは仕方ないんじゃないの。