私を作る、おいしいレシピ
「まだおかわりあるぜー」
「ハジメ、俺にもくれよー。俺が先だぞ、東條」
「まあそう焦るな、ほら、誠からな」
自分が後回しにされているのが不満なのか、酒田くんが唇を尖らせて私を睨む。
しかしながら、小さいヤンキーの睨みは対して怖くない。
「邪魔してごめん」とだけ言ったら、彼はきょとんとした後、ぷはっと噴き出して「べっつにー」と言った。
その顔はとても無邪気で、ただでさえ可愛らしい顔がますます可愛く見える。
ちょっとびっくりだよ。
教室で見る彼は、いつもツンツンとしていて、とっつきにくいのに。
なんかでかいヤンキーとの対比もあって、小さな男の子みたいで可愛い。
なんとなく距離感が近づいた気がして、さっきより一歩彼らに近づいた。
「ていうか、なんでこんなところで鍋なの」
「俺、飯はあったかくないと嫌なんだよ」
答えたのはハジメくんのほう。
そりゃご飯は温かいほうがおいしいに決まっているけどさ。高校の昼ご飯でそれを求めるのは無理じゃない?
そう思ったのが顔に出たのか、「だからコンロを持ち込んでるんだろ」と呆れたように言われた。
「でも……」
一応学校だし、教室だし、火気厳禁だと思うんだよね。
と、口に出す間もなく、紙コップをもう一度差し出された。
「とにかく、お前も食ったんだから同罪。弁当出せよ、座って食おうぜ」
「あ、うん」
でも私のランチバックから出てくるのはおにぎりだけなわけで。
それを見たハジメくんは心底嫌そうな顔をして「これだけ?」と眉を寄せた。