私を作る、おいしいレシピ
「お前のかーちゃん、手抜きもいいとこだな」
「作ってくれるんならもうちょっとなんかあるよ。弁当買えって言われてるの。お金もったいないからおにぎりにしてるだけ」
あくまで重たくならないように言ったら、ますます変な顔をされた。
「お前、高校生がおにぎりだけで育つと思ってんのかよ。ずっとそんな食事か? 道理でチビだし、凹凸も足りねぇよな!」
言ってることは最もだけどね。体の凹凸のことまで言われる筋合いないのよ。
「どこ見てんのよ。悪かったわね、ペチャパイで」
「わかってるなら肉を食え。ほら、このあたりに肉団子があるはず。お代はこのおにぎりでいいから」
「ちょっと、私のおにぎり!」
止める間もなく奪われて一口食べられた。
畜生……っ!
おにぎりが、見る見るうちに奴の胃の中に落ちていく。
恨みがましく睨んでいたら酒田くんが笑い出した。
「はは。東條、ハジメのこと怖くないの?」
「怖く……って、怖くは、ないよね?」
最初こそ見た目にビビったけど。
よくわからないけど美味しい汁ものをごちそうしてくれたわけだし、気軽に話しかけてくるし。
「東條みたいな優等生、俺らのことなんか嫌いだろうって思ってたんだけど」
酒田くんの声にハジメくんも顔を上げ、「こいつ、優等生なのか?」と問いかける。
酒田くんはうんうん、と首を縦に振り、私にも問いかけた。
「ホントならもっといい学校行ってたんだろ? 二次募集でレベル落として入ったって、女子が言ってた。賢いからとっつきにくいって」
「あー」
やっぱりそう思われていたのか。
表面上仲良くはできるけど、親友と呼べるような人はここにはいない。
まあ、私自身、常に本心は隠しているんだから、それも仕方ないことだろうって思うけど。