怪盗ダイアモンド2






「うわ、外真っ暗だね……」

「色々あったもんね……」

私と音遠くんは外に置いてあった椅子に腰掛け、ぼんやりしていた。

宝石を盗む予定だったのに、予想外の事態が多すぎてそれどころじゃなかった。

疲れやら何やらで、もう動きたくない。

「お疲れ〜。今日は散々だったらしいな」

本当にそう。砂漠の猫どころじゃなくなっちゃったわ。

「兄さんが今あのオバサンを仲間の警察官に引き渡してる。あとで事情聴取とか来るかもな」

阿弓がちらりと後ろを見ると、遠くの方でテレビのカメラやら警察やらでごった返していた。

入口より離れたところにあるベンチを選んで正解だった。落ち着けないもん。

「つーかずっと気になってたんだけど……アゲハ嬢、どーしたんだよそのカッコ」

「え?……あっ」

阿弓に指さされて思い出した。

今の私、男装してたんだ!

デスゲームもどきに巻き込まれるわ剥製にされかけるわですっかり忘れてた。

「めちゃくちゃ似合ってるけどよ、そこまでして宝石見たかったの?椎馬兄者は危ないから音遠くんに頼んだんだけど……」

「え、えっと……」

「ごめん、榊さん。僕が無理言ってお願いしたんだ。情けない話だけど、やっぱり怖くてさ。椎馬さんがせっかく僕を頼って指名してくれたから、やっぱ無理だって言えなくて、断れなかったんだよ」

音遠くんが両手を合わせて頭を下げた。

「なんだ、そういう事かよ〜。言ってくれりゃ私が行ったのに」

「榊さんが行ったら、本当に剥製にされたかもしれないよ?染子さんはあの写真の子を探してたんだから。男装したご本人が登場したら、何されたか分かんないよ」

「それもそっか。あ、そうそう。榊じゃなくて阿弓で良いぜ。颯馬兄さんと紛らわしいし」

「ありがと、阿弓ちゃん」


ズキン


「?」

急に心臓が少し痛んだ。

けど、それは一瞬だった。

「アゲハ嬢?どした?」

「う、ううん、なんでもない」

気のせいかな。きっと疲れてるんだ。

「阿弓ー!ちょっと来てー!」

遠くの方で颯馬さんが阿弓を呼んでる。

「ちょっくら行ってくる。あとで颯馬兄さんが送るから、二人はそこで休んでてくれよ」

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