怪盗ダイアモンド2
なんか、猫みたいで可愛い……じゃなくて!
「ど、どうしたの!?大丈夫?」
「あ、あは……ちょっと疲れちゃったみたい」
いつもなら緑っぽく光る瞳に輝きがない。
相当気を張ってたんだ。限界だったんだね……
颯馬さんと阿弓が顔を見合わせる。
「あー、あんなキショい剥製とか義眼なんか見せられたら、メンタル面でやられるよな〜。ちょっとそこ座ってて。自販機で水でも買ってくる」
「私も行く。ついでに毛布とかもらってこよーぜ」
「度々すみません……」
無理に立ち上がろうとする音遠くんの頭を撫で繰り回しながら抑える颯馬さん。
こういう所は、頼れるお兄さんって感じがしてかっこいい。
「いーっていーって。お兄さん、お巡りさんだからね〜。そういう時は『ありがとう』でいいんだよ」
にかっと白い歯を見せて笑うと、音遠くんも腰を下ろした。
「ケッ、アラサーで『お兄さん』はねーだろ」
「うるせー!まだ二十代だからお兄さんだよ!!」
「四捨五入したら三十路だろーが、おっさん!!」
「誰がおっさんだ、ばぁーーーーか!!」
やいのやいのと騒ぎながら去っていく榊兄妹。
さっきかっこいいって言ったの、前言撤回。
会話のレベルが小学生だ……
でも、阿弓と一緒にいる颯馬さん、すごく楽しそう。とてもじゃないけど警察には見えない……
けど、怪盗的にはライバルにあたる人だ。阿弓のお兄さんとはいえ、完全に気を緩めちゃいけない……
颯馬さんの背中を見つめると、いつの間にかふっと膝が軽くなった。
「あれ?音遠くん?」
急に膝に倒れてきて急にいなくなるなんて、本当に猫みたい。
どこ行ったのかな。音遠くんならどこに行っても大丈夫だと思うけど。
今日は音遠くんのかっこいいところも可愛いところもたくさん知れた気がするな。
すごく大変だったけど、そこまで悪くなかったかも。
私は空に煌々と光る三日月を見上げた。
笑った猫の目みたい。