怪盗ダイアモンド2


それに、海馬兄貴は硬派だから『兄さん』って優しい響きは似合わない気がするし、オネェっぽい透馬兄様は『兄ちゃん』って感じがしない。

「それだけだよ」

「へー」

「私が蝶羽を『アゲハ嬢』って呼んだり、亜希乃が鳳莉を『ほーりぃ』って呼ぶのと同じ感覚」

「なんか、良いね、そういうの。たくさんお兄さんがいるのに、一人一人をちゃんと見てる感じがして」

「えー?鳳莉だって一人一人ファンレターの返事書いてるだろ。ちゃんとその人が好きそうなデザインのレターセットまで買って」

たまに学校に来た時、休み時間にまで書いてるのを見る。

「え?だってそれは、私を思って書いてくれたんだから、ちゃんと応えないと失礼でしょ?」

……鳳莉が人気なのが分かった気がする。

こーいう事、さらっと言えちゃうんだもんな〜。

「次の日には、その人は他のアイドルのファンになっちゃうかもしれないし、もしかしたら手紙をくれた次の日に死んじゃってるかもしれないからね。『明日』が無いかもしれないんだもん。一人一人ちゃんと見て、想いを伝えるのは大事だよ」

想いを伝える、ねぇ……

JPOPの歌詞じゃあるまいし、そんな小っ恥ずかしい事……

でも、今ならちょっと分かるかも。

蝶羽がいなくなってから、心に穴が空いたみたいな、空疎になったみたいな感覚がある。

< 50 / 122 >

この作品をシェア

pagetop