なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。

まるで金縛りにあったみたいに体が動かない。


“魅せられる”


そんな言葉が頭をよぎった。



長瀬の視線が、私の腕を掴んだままの男を捉える。


ただそれだけなのに、男は「ひっ!」と悲鳴を上げて、私からすぐさま手を離した。



「散れ」


ぞっとするような低い声でそう言う長瀬は、真っ黒な鋭い目で男を見下ろしていて。


途端に真っ青になった男達は、逃げるように闇の中へと消えていった。



男達が見えなくなると、ゆっくりと長瀬の視線が私に移ってくる。


「あ…あり……がと」


「……はぁー」


ん?


今、何かあからさまにため息つかれましたけど。


「アホか。ひとりになんな」


ドカッと私の隣に腰をかける長瀬。


「ご…ごめん!まさかあんなのにからまれるとは思わなくて…」


「そうじゃねぇよ」


「え?」


「“こういう時”ひとりになろうとすんな」


長瀬の茶色い瞳が、私を映す。


“こういう時”?


それって、辛い時ってこと?


「な、なーに言ってんだか!年下のくせ生意気!心配しなくても、私は大丈夫だから!ちょっとビックリしてひとりになりたかっただけ!」
< 150 / 345 >

この作品をシェア

pagetop