なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
まるで金縛りにあったみたいに体が動かない。
“魅せられる”
そんな言葉が頭をよぎった。
長瀬の視線が、私の腕を掴んだままの男を捉える。
ただそれだけなのに、男は「ひっ!」と悲鳴を上げて、私からすぐさま手を離した。
「散れ」
ぞっとするような低い声でそう言う長瀬は、真っ黒な鋭い目で男を見下ろしていて。
途端に真っ青になった男達は、逃げるように闇の中へと消えていった。
男達が見えなくなると、ゆっくりと長瀬の視線が私に移ってくる。
「あ…あり……がと」
「……はぁー」
ん?
今、何かあからさまにため息つかれましたけど。
「アホか。ひとりになんな」
ドカッと私の隣に腰をかける長瀬。
「ご…ごめん!まさかあんなのにからまれるとは思わなくて…」
「そうじゃねぇよ」
「え?」
「“こういう時”ひとりになろうとすんな」
長瀬の茶色い瞳が、私を映す。
“こういう時”?
それって、辛い時ってこと?
「な、なーに言ってんだか!年下のくせ生意気!心配しなくても、私は大丈夫だから!ちょっとビックリしてひとりになりたかっただけ!」