なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
「……っしないよっっ!!!!」


「は?」


「キスはだめっっ!!!!」


泣きながら、必死に長瀬の口を手で押さえる私に。


「……くっ。グシャグシャな顔のくせに強気」


そう言って含み笑いを零す長瀬に、恥ずかしさが込み上げてくる。


悪かったわね!!


それとこれとは別問題なのよっ!!


「つーか、しねーし」


「……え?」


「他の男想って泣いてる女なんかに、キスなんかしたくねぇ」


「……っ」


真っ直ぐな長瀬の視線。


一瞬何が悲しくて泣いてるのか忘れてしまいそうなくらい射すくめられてしまった。


そんな私の額に、コツンという音を立てて長瀬の額があたる。


「長……」


「いるじゃん」


「……え?」


「センパイには、俺がいるじゃん」



長瀬……?



「俺のこと好きになればいいじゃん」


「……っ」



こいつって……ヤツは……。


私は今さっき失恋したばっかだっつの。


今年は厄年だ。


せっかくの平和な高校生活をあんたに脅かされるし。


こんな一年を締めくくる最後の最後の日に大失恋するし。


本当は“もうやだー!”って泣き叫びたいよ。


だけどバカ。


あんたのせいで、涙ひっこんじゃったよ。




「……っ」


< 152 / 345 >

この作品をシェア

pagetop