なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
額をくっつけたまま、長瀬の瞳に映る自分をぼんやりと見ていたら、突然長瀬が顔を背けて私から離れていく。


「……こっぱずかしいわ」


そう言って顔を押えて隠してるけど、長瀬の耳が少し赤い。


まさか……照れてる!?!?


あの長瀬が………うそ…。


あまりに珍しい光景を前に凝視していたら、手に温かいものが触れて、思わず肩が上がってしまった。


長瀬の手が、私の手を握っていた。


「ちょ…離……」


「思ったより、何もできねー自分にムカつく」


拗ねたような表情で、私に目だけを向ける長瀬。


「本当は、傷心のとこつけこんで、センパイのこと落としてやろうと思ったのに…。泣いてるセンパイ見たら案外なんもできねぇ…」


“ムカつく”と言って長瀬はそっぽを向いてしまった。


やばい。


やばいやばいやばい。


今私、間違いなくキュンとしてしまった。



「……ひ、100年早い」


「うるせー。

……そろそろ戻ろーぜ。寒ぃ」


「うん…」


その後私は、長瀬に手を引かれるがままにみんなのところに戻った。


長瀬の手は、大きくてあったかい。


年下なのに、ガキんちょなのに、


その時ばかりは凄く凄く頼もしく感じた。



………ちょっと悔しいな。

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