なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
冬休み前には何もなかった花壇に、所どころ緑色をした芽が顔を出していた。


手前のチューリップの花壇とは別の、奥の花壇だけ。


「奥の花壇は、何が植わっているんですか?」


いつだか、先生が何かの球根を植えていた記憶はあるけど、そういえば何の球根か聞きそびれてたな。


「スイセンです」


先生は、愛おしそうにその芽を眺めながらそう答える。


「スイセンて聞くと僕、何だか仙人を思い出してしまうんですよね」


「へ?仙人ですか?」


“そう。仙人”と言って笑う先生は、何だかちょっと子供みたい。


つい、つられて私も顔が綻ぶ。


仙人ていうとあれでしょ?


険しい場所で座禅組みながら修行してるおじいさん。


何か、神がかった力を習得してるあの人。


「事実、“水仙”という漢名の由来には、水辺に咲くその姿を仙人の様子に例えたと言われているんですよ。“仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙という”。この言葉、知ってますか?」


私が小さく首を振ると、先生は「中国の古典なんです」と眉を下げて笑う。


先生すみません。


生憎私は、古典がものすごく苦手なんです。
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