なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
11☆ヤンキー長瀬が本気を出せば
高校生活3年間。
とにかく波風立てぬよう、目立つことは一切せず過ごしてきた私が。
卒業を目前に、まさかこんな境地に立たされることになってしまうなんて……。
「これはどういうことなんですか?花枝さん」
ここは、入学したての校内見学の時に一度訪れたきりの場所。
よほどのことがない限り。
いや、よほど“ヤバイ”ことをしない限り、なかなか訪れることがないはずの場所。
「何とか言いなさい。長瀬くんとは交際しているんですか?校長先生があなたに事の経緯を聞きたいと仰っているんです」
そう。
今、私がいるこの場所は“校長室”だ。
ブラインドが落とされた薄暗い部屋。
大きなデスクの奥で感情の読み取れない表情を浮かべている校長先生と、そのデスクの横で眉を吊り上げながら甲高い声で捲し立ててくる教頭先生。
平和を愛し、悪さのわの字もしたことのない私が、なぜこんな状況に陥っているのか……。
事の発端は、数時間前––––。
『センパイ。おかしくね?』
『何のこと』
相変わらずだるそうにタラタラと歩く長瀬の前を、3メートルほど離れて競歩で進む私。