なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
「それから、長瀬とは?」
「別に。なにもないよ。顔を見てもないし」
旧校舎に教室のある1年生と2年生は、新校舎に来ることなんてほとんどない。
新校舎の方にある職員室を訪れる時くらい。
逆を言えば、こちらも同じ。
何か理由がなければ旧校舎に行くことはない。
そう。
普通に生活をしていれば、2年生と––––長瀬と顔を合わせることなんて、ほとんどないんだ。
「俺、これでも責任感じてるんだぞ」
「責任?」
教室へと続く階段をゆっくりと上りながら、金城くんがバツの悪そうな顔で振り返る。
「お前らが別れることになったの、元はと言えば、俺が余計なこと言ったからだしな…」
眉尻を下げて、申し訳なさそうに笑う金城くんに、私は大きく首を振ってみせた。
「それは違う。あの時、金城くんが言わなかったとしても、ゆくゆくは話さなきゃいけないことだったんだもん。遅かれ早かれ、こうなってたと思う。だから、金城くんが責任感じることはないから」
階段の途中で足を止め、どこか哀し気な表情を浮かべる金城くんに、笑顔を作ってからその横を通り過ぎる。
「花枝は、本当にこのままでいいのか?」