なぜか私、年下ヤンキー手懐けました。
「おはようございます!花枝先輩」
「浅木くん。おはよう」
次の日の早朝。
朝の清掃を済ませた私は、花壇へと足を運んでいた。
校門からその様子が見えたのか、登校してきたばかりの様子の浅木くんがら土をいじっている私のところまで颯爽とやってくる。
「何やってるんですか?」
「ちょっと花壇の手入れをね。チューリップとスイセン、あと少しで咲きそうだから」
「お!本当っすね。これ先輩が植えたんですか?」
花壇を覗き込み、まだ蕾のチューリップに触れる浅木くんに小さく首を振る。
「ううん。私じゃないよ……」
このチューリップの球根を植えたのは長瀬だ。
雨でびしょ濡れになりながら植えていた長瀬を思い出して、胸がギュッっと押しつぶされそうになる。
それだけじゃない。
長瀬と、初めて出会ったのもこの場所だった。
喧嘩するわ、球根をばら撒くわ、ガムを吐くわ。
最初の印象は本当に最悪で、こんなヤツ絶対に関わりたくないと思った。
それなのに、長瀬を知れば知るほど長瀬に惹かれていった。
まるで、冬の間積もった雪が溶けるみたいにゆっくり心が溶かされて。
そこに自分でも気づかないうちに、長瀬の存在が大きな根を張っていた。
長瀬との思い出が走馬灯のように流れて来て、湧き上がる思いを唇を噛み締めぐっとこらえる。